2024年1月28日

サーディア

私はハンマーフェルの貴族の出身だが、故あって身分を隠しスカイリムで暮らしている。

ハンマーフェルと敵対するアルトマー達ばかりか、同胞であるレッドガードからも追われていて、どこかに落ち着いても追っ手の気配を感じたら何もかも放り出して逃げ出して、の繰り返しだ。

今はここ、ホワイトランの「バナード・メア」で、サーディアと名乗り住み込みの給仕として働いている。

もう無事に故郷を目にする機会はないだろう。今はただ、例えスカイリムのどこかででも穏やかに暮らし続けることができれば良いと願っている。それなのに……。


「アリクルの戦士がレッドガードの女を探している、ですって?」

私はシチュー鍋をかきまぜる手を止めずに、よそ者の男を横目で見た。私もよそ者に違いないが、この男は本当にごく最近、「バナード・メア」を頻繁に訪れる様になった。流れ者の様な風体なのに羽振りが良く、「バナード・メア」の酒場や二階の部屋を良く利用する。

となるとこの男はアリクルに金で雇われ、私を捕らえるために来たのだろう。

1年以上もこの街でうまくやってきたのに、得体の知れない男の金稼ぎのためにまたも努力が水の泡かと思うと眩暈がしそうだった。だがまずはこの男から無事に逃げ出さなくてはならない。


「わかったわ。今日もここに泊まるんでしょう?上の部屋で話しましょう、ふたりで、ゆっくりと……」


私は男に向き直るとできるだけ意味ありげに言ってやり、先に立って二階の客室へ向かう。男は素直についてきた。


部屋の扉を開けてやると、先に入った男はそこらに飾られた壺や灯り取りの窓を見回している。その背中を見ながら決意を固めた。この男を動けない状態にして時間を稼ぎ、急いで荷物をまとめて出ていこう。


バタンと扉を閉じ、その音に紛れて短剣を抜いた。鋼鉄の鋭い刃を両手で支えて体ごとぶつかれば革だって易々と貫通するし、内臓を刺せば声も出せなくなる。大丈夫だ、きっとやれる。


覚悟を決め、歯を食いしばり男の背中に向かって突進した。


- ボコッ!!

その瞬間、鈍い音と共に私の身体が宙に浮いた。左の脇腹に痛みと衝撃が走り、息が止まり悲鳴もあげられなかった。そのまま横方向に飛んで部屋のベッドにドサッと倒れ込む。


信じられないことに、男は後ろに目がついているかのように体をかわし、振り向きざまに強烈なキックで私を蹴り飛ばしたのだった。

「うっ、はあっ、ゴホッ」


どうにか呼吸を取り戻して起き上がったとき、手にしていたはずの鋼鉄の短剣は男の手に渡り、私の首筋にピタリと向けられていた。


「……お願い、助けて、殺さないで……」

今すぐ殺されるか、アリクルに引き渡されハンマーフェルまで連れていかれて殺されるか、結末は変わらないとしてもやはり今死にたくはなかった。死を少しでも先に延ばすため、絶望的な気持ちで命乞いをした。


そして言われるがまま、男の目の前で服を脱ぎ尻を差し出す。経験はあるが多くはない。ことにスカイリムに逃げ込んでからは荒事はあっても身体を穢すようなことはなかったのに……。


男は短剣を構えたまま着衣を脱ぎ捨てる。静かな衣擦れと乱れぬ呼吸音にはいささかも隙がなく、尻をあげた無防備な姿勢で動けないまま、絶望感が深まってゆく。


男がベッドの傍らに立ったまま私の腰を無造作に掴むと、その掌が焼ける様に熱く感じられる。男の手が熱いのではなく、これから犯されようとする不安と緊張で自分の尻が冷えているのだった。ぐっと引き寄せられる。もう駄目だ。見知らぬ男に自分の身体を思いのままにされる悲嘆と屈辱。今朝も自分が清掃した「バナード・メア」の客室のベッドで、私の身体は背後から鋼鉄の短剣ならぬ男性自身の肉槍で貫かれた。


「うっ、あぁっ」

固いものを突き入れられる異物感に思わず声をあげる。それが私の肉襞を割り開いて押し進むと、身体の奥に湧き出し疼いていた熱いものが噴き出した。その気があろうとなかろうと男に求められセックスする体勢になれば、それを受け入れるために濡らしてしまうのが女の身体だった。

男は道具の具合を確かめる様に少しづつ抜き挿しを行い、やがてそのまま本格的なストロークへと移行して私の身体を揺さぶるのだった。


その時、男が短剣を持っていないことに気付いた。ベッドに乗り膝立ちとなって私を突き上げる男の右手は私の腰を、左手は髪の毛を荒々しくつかんでいる。何とか男から身を離してベッドから落ちた短剣を手にできれば、男も今や裸で無防備、うかつに私に手を出せないだろう。


私の心はまだ折れていなかった。必死の想いでベッドの周囲に視線を泳がせ始めた時、男の動きが変わった。


「う……ぐっ、げぇ……」

大きな掌が喉にあてがわれ、凄い力で引き寄せられる。さらに深く密着した結合部にはもうひとつの手がまわされ、敏感な肉の芽をいじりまわされた。


何を考えているのかお見通しだ、とでも言いたげな男の仕打ちだった。声が出せない、息もできない、こめかみのあたりが熱く脈打つ。


- 嫌だ、死にたくない、許して!

そうする間も性器をおもちゃにされて湧き上がる肉体的な快感に見悶えさせられる。意識が遠くなりかけたところで、解放されてベッドに投げ出された。


男が仰向けに寝て私の身体を上に置いた。自分で入れろということなのだろう。暴力とセックスで支配された女にはもう選択肢はない。屹立した男根の切っ先に濡れた花びらをあてがい、唇を噛みしめて腰を落とした。


……気持ち良かった。レイプされたとしても身体を傷つけられたりしない限り、肉体が気持ち良くないセックスなどない。ただ自分の意思が踏みにじられる悲嘆と屈辱、相手の男を嫌悪する心が体と相反し引き裂かれる想いがする。だからこそ女はレイプを嫌悪し、男は女を支配するための手段とするのだろう。


私の心は既に敗北を認めていた。いかなる手段を用いてもこの男の暴力がそれを凌駕し蹂躙されるのであれば、そしてこの男が私を性の玩具として弄ぶことを望むのであれば、ただひたすらに許しを請い、あらゆる手管で奉仕し、庇護を求めるしかなかった。


だから男が私の身体を降ろして仰向けにさせたとき、自らの手で両脚を持ち上げ大きく開いて懇願した。

「どうぞお好きな様にお使いください。どんなご奉仕もお望み通りに致します。どうか私をあなたの所有物にしてください」

男は無言で腰を進め、一段と速い前後運動を開始した。私の身体を激しく震わせるそれは、男が自身の欲望を吐き出そうとするための動きだった。それが返答なのだと思った。


男は力加減など考えず欲望のまま私の身体を嬲り、掴み締め、揺さぶり、打ち付け、まるで意思や感情を持たない人形の様に扱った。ただそうされるだけで私は息が絶えるかと思うほど甘美な悦楽を味あわされ、幾度も絶頂に追い込まれた。


遂に男は結合を解いて立ち上がると、私の身体をまたぎ仁王立ちで黒々と滑り光る雄々しい肉棒を擦りたてた。


これが契約の儀式だ、と思った。相手を見下ろしながら欲望の体液を放出して印をつけるという行為が、所有し庇護する者とされる者との関係をお互いの心に深く刻みつけるのだ。何故かしらドキドキと胸が高鳴るのを感じながらその時を待つ。


- ビュッ、ビュビュッ、ドクッ、ドクン…

熱い男の体液が頬に、瞼に、唇に、鼻に降りかかり、私自身が染められていく。高揚感に意識が遠のく……。


長い一瞬だった。男は既にリラックスした様子でベッドの脇に腰を掛けていた。


裸の逞しい背中が無防備にさらされている。だが何度策を弄し不意を狙ってその背中を襲ったとしても、この男は常にそれをかわして相手に手酷い罰を与えるだろう。


そうする代わりに私は起き上がり、顔中に男の精液を纏いつかせたまま哀願した。


「お願い・・・助けて。この街で信用できる人は一人もいないんです」

2 件のコメント:

  1. 久々に覗かせてもらったら素晴らしい記事が…
    これからも楽しみにしてます!

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    1. 見ていただきありがとうございます!
      今後についてはちょくちょく…というと詐欺になりますが、LE版で以前よりも快適に起動できる様になったので、いくつか記事を作っていきたいと思っています。

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