カトリアがアルクンザムズの断崖から振り落とされて命を落とした後、次の訪問者はわすか数日後にやってきた。
黒革に身を包んだ男と金糸で縫い取られた装束をまとった小柄な女の二人組は、警告の声に歩みを緩めることはいっさいなかった。
そこでカトリアは、自らの持つ情報を提供してエセリウムの発掘を託してみようと思い、彼らの前に姿を現したのだった。
気付けばなぜか、男に激しく犯されていた。
霊体がこの世に姿を留め、人間に危害を成すことなどこのスカイリムでは珍しくもないが、人間が霊を打ち破るのでも、祓い清めるのでも消し去るのでもなく、性の欲望の相手をさせることが出来るなどとは、全く聞いたこともない話だった。
男が当然の様に肉柱を深々と埋め込んだままドクドクと射精するのを受け止めながら、霊体が生きた人間の男の精液で妊娠することはあり得るだろうか、とカトリアはぼんやりとした頭で考えていた。
だがこの二人、ドヴァキンとゴルムレイスは、間違いなく並々ならぬ手練れの戦士であり冒険者であった。
とにもかくにもエセリウムの説明をして共にその発見を目指すこととなるが早いが、嫌らしいファルマーやシャウラスも、危険なドゥーマーのオートマトンやからくり罠も、いともやすやすと打ち破り排除し、彼ら3人はアルクンザムズの最奥部に安置された蒼く輝く金属の欠片を目にしたのだった。
「これが、エセリウム……。文献で読んだ通り、いやそれ以上だ……綺麗だね……」
3人はそれから残るエセリウムの欠片を求めて各地を探索した。
カトリアがあたりをつけた遺跡に行き、ドヴァキンとゴルムレイスがその剣技とスゥームの力で邪魔者は全て排除する。カトリアが長年をかけてきた調査に誤りはなく、欠片の数は順調に増えていった。
ドヴァキンもゴルムレイスも、エセリウムに対する欲望の様なものは全く希薄だった。
カトリアにはそれが不思議だった。カトリア自身はドゥーマー文明研究への傾倒が嵩じてエセリウムの実物を求めているわけだが、世の人々が失われた稀少金属を手に入れることでもたらされる富や栄誉に高い関心を寄せるのは当然だと思っていた。
だがドヴァキンもゴルムレイスも、既に常人には推し量れぬほどの異常な戦いをくぐり抜けてきたためか、エセリウムを求めるこの探索行を「ただの暇つぶし」だと言う。それでいて実際の行動は、長年遺跡探索の経験を積んで来たカトリアが見ても舌を巻くほど細心かつ大胆であり、ひとつひとつの決断に迷いがない。
一方でエセリウムへの強い執着によりこの世に繋ぎとめられたに過ぎないカトリアは、遺跡探索を行っている時以外、その姿をはっきりと現すことができない。そのため遺跡から遺跡への移動中、その存在はドヴァキンとゴルムレイスの傍にありながら、生者の目には見えない状態のままとりとめもない想念に微睡み浸っていた。
大勢のファルマーたちに身体を嬲られ貪り尽くされた悪夢の様な出来事がまさに悪夢として甦り、声にならぬ叫びとともに覚醒することもしばしばだった。
そんな時、旅の宿のベッドでは、まず間違いなくドヴァキンとゴルムレイスが激しく交わりあっていた。食事をし呼吸をするのと同じ様に女を貪るドヴァキンに貫かれたゴルムレイスが、激しい快感に息も絶え絶えとなり身体を震わせているのを横目に見ながら、カトリアは我知らず脚を抱え込む腕に力を込めるのだった。
出会い頭にいきなり犯されたことには驚きはしたものの、エセリウム探索を共にするうちにドヴァキンの常人離れした強さと行動力を思い知らされたカトリアは、偉大な男に本能の赴くまま激しく身体を求められたというその記憶に、身悶えしたくなる様な切なさを感じる様になっていたのだ。
そんな旅の果て、ドヴァキン、ゴルムレイス、カトリアの3人は、ついにエセリウムの鋳造器具が眠るという遺跡の入り口を探し当てた。
遺跡の最奥部にはこれまで見たこともない、ドラゴンの如き火炎を吐く巨大なドワーフ・センチュリオンが待ち構えていた。
激闘の末にそれをも撃破したドヴァキン達は遂に、エセリウムの鋳造器具の前に立ったのだった。
数多の武具を鍛えてきたドヴァキンも、初めて扱う金属と器具を前にして悪戦苦闘したものの、何時間かの作業の後、振り返ったその手には蒼く輝くエセリウムを冠した杖が握られていた。
「美しいね……非の打ち所がない……」
カトリアはただ喜びの中にあった。
悲嘆や後悔は不思議と感じなかった。エセリウムを探索する事こそが彼女の望んだものであり、それを与えられ全うしたことで彼女がこの世に生を受けた目的が果たされた。旅が終わるのは幾分名残惜しかったが、満足だった。
「ようやく……眠りにつける。楽しかった、ありがとう」
そう言ってお辞儀をして、カトリアの霊はドヴァキンの前から消えていった。
「願わくば勇敢なる学者カトリアに、ソブンガルデの門が開かれんことを」
ゴルムレイスが呟き、そしてふたりは、もはや二度と使われることはないであろうエセリウム鋳造機器の前から立ち去った。
∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∫
「お前のその杖は……何てこった、エセリウム製だな!」
それからほどなく、ドヴァキンは街道で行き会ったダンマーの男から声をかけられた。男の名前がタロン・ドレスであることを確認すると、ドヴァキンは迷わずに剣を抜いた。
まず傭兵たちがふたりの剣技の餌食となると、ドヴァキンはエセリウムの杖を掲げてドワーフ・スフィアを召還し、恐怖に硬直するダンマーの男の喉を掻き切らせた。
タロン・ドレス一行を始末して街道を再び進むふたり。
だがやがてドヴァキンは立ち止まり、ゴルムレイスに何やら囁きかけた。
「ああ、ソブンガルデに迎えられるのは剣をとって戦う戦士ばかりとは限らない。魔術師もいれば政務官も商人も吟遊詩人でも、己を貫き、勇敢で誇り高いノルドとして生きた者であればな」
「なにっ! ドヴァキン、貴様、正気か? いや、おそらく出来るだろうが……しかし……」
ドヴァキンに見据えられ、やがてゴルムレイスは折れた。瞳を閉じて精神を集中し、ソブンガルデに在るものを現世に引き寄せ実体化させる力を発動させる。
「ソブンガルデより……転送!」
すると夕刻のスカイリムの空に突如として金色の光を纏った人影が現れ、不自然なほどゆっくりと落ちて、ドヴァキンの腕の中におさまった。
腕の中で、驚いた顔でドヴァキンを見上げているのは、エセリウムの探索を終えて未練なく消えていったはずのカトリアであった。しかもゴルムレイスの物質転送の力により、霊体ではなく現世に実体化していた。
地上に降り立ったカトリアはしばらく呆然として自らの手足を眺め、ドヴァキンとゴルムレイスの顔を順番に眺め、驚きから覚めると猛然とドヴァキンに食って掛かった。
「ちょっとドヴァキン、何てことをしてくれてんのよ! わかる? 私はねぇ、ソブンガルデでね、あの! イスグラモルに! 話を聞こうとしてたとこなのよ!?」
「そりゃ私の専門はドゥーマー文明よ! でもね、スカイリムにノルドの王国を築いたその生き証人に! あ、いやもう死んでるんだけどね! 聞いてみたいことが山ほどあったわよ! よりによってそんな時にね、もう!」
そう叫んでカトリアは、ドヴァキンに飛びついて首に腕を巻きつけ、その腕にあらん限りの力をこめた。
「だからもう、責任取ってもらうよ! 私がもう一度死ぬまで、ドヴァキン、あなたから絶対に離れないから!」
カトリアは悲運のキャラなので取り上げてもらってうれしいですね。
返信削除とてもかわいいですし、楽しみです
いまだにコメントを付けていただけるとは……
削除大変嬉しいです、ありがとうございます。
カトリアさんは良いキャラですよね!
励ましのコメント入力をいただきました匿名の方、本当にありがとうございます。
返信削除削除された最初の書き込みの方を念のため完全削除しておこうとして、誤ってせっかくいただいたコメントを消してしまいました。ごめんなさいm(__)m
季節柄、サトゥラリア(クリスマス)ネタからでもぼちぼちやっていきますね
お久しぶりです!今か今かと1年も待った回がありました!
返信削除ボチボチでいいので作品を待ちしてます!
にぁー楽しみが戻ってきてうれし!!
多くの作品の結末をお待ちしてます!(ムラムラ
過分なお言葉、それに1年も経ってしまってもサイトを覗いていただけるなんて、本当にありがとうございます。
削除「多くの作品の結末」についても、そんな風に期待いただけると、やっぱり続けたいよなーって思います。多少なりとも、同じ楽しみを共有していけたら。
更新キてるー
返信削除何ともイイハナシで良かったですー
今年も残りわずかですけども、更新まってます(笑顔
どもー。エロはない話ですが、大分前からスクショは取り貯めていたものなので、公開して区切りを付けられてすっきりしました。
削除通常営業(エロI)も頑張ります。
なんと!更新来ていたとは!
返信削除しかも久々のカトリアさんの話でびっくり。
とても好きなキャラなのでハッピーエンドは嬉しかったり寂しかったりです。
うちのドヴァキンさんは、いつぞやここでいただいたカトリアさんが今でも現役ですよ。
これからほかの記事も回ってきます。
無理のない更新を待ってますね~
返信できておらず失礼しました。m(__)m
削除カトリアさん顔データを貰っていただいた方でしたか。今でも現役とは Σ(゚Д゚)
ゴルムレイスの召喚能力というトンデモ設定で落ちをつけましたが、お楽しみいただけたら幸いです。